オルミエント(バリシチニブ)(円形脱毛症治療薬)

円形脱毛症とは

円形脱毛症は、免疫反応により毛包(毛根)が攻撃され、突然の脱毛斑が生じる自己免疫性疾患です。頭髪だけでなく、眉毛・まつげ・体毛におよぶ場合(全頭型・汎発型)もあり、生活の質に大きく影響します。

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オルミエント(バリシチニブ)とは

オルミエント(一般名:バリシチニブ)はJAK1/JAK2阻害薬に分類される内服薬です。関節リウマチやアトピー性皮膚炎で用いられてきましたが、日本でも円形脱毛症に保険適用があり、新たな治療選択肢となっています。通常、成人に4mg 1日1回で開始し、状況により2mgへ減量します。

具体的なメカニズム

JAK-STAT経路とよばれる免疫システムの中で、バリシチニブはJAK1/JAK2と呼ばれる酵素を選択的に阻害します。これにより過剰な免疫反応による毛包(毛根)を攻撃してしまう反応を落ち着かせるため、炎症を抑え発毛を助ける働きをします。

オルミエント(バリシチニブ)治療対象の方

  • 投与開始時に頭部全体の概ね50%以上の脱毛がある
  • 過去およそ6か月間、自然再生が認められていない
  • 15歳以上の方

治療期間と効果の目安

個人差が大きいため、6か月以上の継続を前提に効果と安全性を定期的に評価し、減量・継続・中止を判断します。臨床試験・実臨床では3〜6か月で発毛を自覚される例が多く、早い方では2か月前後でうぶ毛が観察されます。

オルミエント治療の副作用・注意点

オルミエント治療の副作用

  • 感染症(帯状疱疹、上気道炎、尿路感染など)
  • 肝機能異常
  • 好中球、リンパ球、Hb低下
  • 血栓症(まれ)など

オルミエント治療の注意点

  • 妊娠中・授乳中の方は治療ができません。
  • 定期的な血液検査(血算、肝機能、脂質、炎症関連)と帯状疱疹既往の確認が必要となります。
  • 腎機能障害の方:中等度の場合は投与量を少なくします。重度は原則投与不可となります。
  • 他の経口JAK阻害薬・免疫調整生物薬・シクロスポリン等との併用は感染症リスク増大のため併用は原則できません。
  • 他治療からの切り替えの際は洗い替え期間や再燃リスクを考慮して個別に相談したします。例:局所免疫療法・外用ステロイド等

オルミエント治療の料金

オルミエントの料金目安

薬剤原価月額の概算(30日分/保険3割負担の例)
1mg¥1,357¥12,210
2mg¥2,473¥22,250
4mg¥4,820¥43,380

※2025年11月現在のオルミエントの薬価をもとに計算しています。
※初・再診料、採血・検査、処方料などが別途かかります。実際の窓口負担は各種公費・高額療養費制度により変動します。

オルミエント治療のよくあるご質問

軽症(小さな脱毛斑)の場合も保険で使えますか

投与開始時に頭部の概ね50%以上が脱毛し、約6か月自然再生がない成人が対象です。軽症にはまず他の治療を検討します。

どれくらい飲み続けますか? 

4mgにて目安は3〜6か月で評価し、効果があれば6か月以降も継続、状況に応じて2mgに減量を検討します。

いったん生えたら、やめても再発しませんか?

再発する可能性があります。減量・中止のタイミングは発毛状況と再発リスクを踏まえて医師と相談します。

他の内服薬や生物学的製剤と一緒に使えますか?

原則併用しません。感染リスク増大のため、JAK阻害薬同士や強力な免疫抑制薬との併用は不可です。

この記事を書いた人

宗大先生

医療法人鶴町会 副理事長
流山鶴町皮膚科・小児科クリニック 皮膚科担当医師
つくば・土浦鶴町皮膚科クリニック副院長
鶴町 宗大 医師
◆皮膚科専門医 ◆レーザー専門医 ◆医学博士